デザインのある光景Number: 2


Subject:

Cube

Text: Yoshiko Taniguchi

Photo: Kyoko Omori

Mother Comet No.14 | 2017.May

外側の直径は38mm。立方体の素材はアルミニウムで、中には四隅がわずか0.2mmでつながった、2つの立方体の存在が確認できる。これはサイズの異なる立方体を組み合わせた加工品ではなく、緻密な計算を元に行程を編み出し、アルミの塊を切削した、いわば彫刻品。これはなんと、被切削物を回転させながら丸く削ること(ナイフでリンゴの皮をむくイメージ)を得意とする工作機械「旋盤」で作られているという。旋盤の特長を知っている人ならば、入れ子のように削られた、小さな立方体の凄さを理解してもらえるはずだ。

この作品と出合ったのは、北九州市小倉南区にある「九州職業能力開発大学校」。ものづくりの技術者を育成する厚生労働省所管の学校だ。作者は「生産機械システム技術科」の2年生、高橋美里さん(22)。指導した教授の黒木猛さん曰く「これを作れる生徒は毎年1人か2人。0.01mm単位の緻密な作業は、高い技術と根気が必要です」。彼女は2日間かけ、一発でこのチャレンジに成功した強者。素材を変え、合計6個を制作したそうだ。

幼い頃からものづくりに強い関心を持ち、進学先の工業高校では「機械工作部」に所属。とくに旋盤に魅せられた高橋さんはコツコツと技術を磨き、一昨年と昨年は「技能五輪」にも挑戦している。この作品を制作したのは、技能五輪の練習中。気分転換で作ったところ「割とスムーズにできたんです」と笑う。高校時代に、初めてこの作品を見た時は、どうやって作るのか想像もできなかったと言うから、その成長は著しい。

「実は高校の恩師が同じような物を作っていたので、お守りがわりに持っていて。いつか自分で作って返せよと言われていたので、完成品の1つは、無事に返却できました」。教え子の成長を目の当たりにした、恩師の笑顔が目に浮かぶ。

高い技術によって生み出されたこのデザインには、技術者を目指す1人の女性の、青い日々が刻まれていた。そしてこれからも目標に向かって走り続ける彼女は、可能性という無限のキャンバスに、さまざまなデザインを描き続けていくだろう。

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